研究概要 |
ウエスト症候群は乳児期に発症しepileptic spasm、脳波上hypsarrhythmia、重度の精神発達遅滞を特徴とする難治てんかんで、その遺伝学的背景の大部分は不明である。最近精神遅滞の原因遺伝子がウエスト症候群患者にも発見された。よって、ウエスト症候群と精神遅滞は共通の遺伝学基盤を有する可能性がある。申請者はGバンド法により染色体異常症(スミスマケジェニス症候群)が明らかになった小奇形を伴うウエスト症候群の症例を初めて報告し(Jouranl of Child Neurology : 24 : 868-873, 2009)、原因不明の潜因性ウエスト症候群に小奇形を伴う症例が多いことに着目した。小奇形と精神遅滞を伴うことは、染色体異常の存在を示唆する現象であるが、通常のGバンド法で染色体異常が検出されることは稀である。本研究の目的は、ゲノムコピー数の検出に有効であるマイクロアレイCGH法を用いて、ウエスト症候群の原因遺伝子を新たに同定し、その機能解析を行うことによって病態発症のメカニズムを解明することにある。本年度はまず、宮城県の小児神経科医を通じてウエスト症候群の症例の検体を収集し、宮城県における発生率(出生1万対3-4)を初めて明らかにした(Epilepsy Research : 87 : 299-301, 2009)。収集した症例の中には、ウエスト症候群の発症機序に深く関与する症例があったので学会発表した(第43回日本てんかん学会、弘前)。さらに、申請者の所属する施設におけるマイクロアレイCGH法の検査方法を確立した。今後は、収集した小奇形と精神発達遅滞を伴った潜因性ウエスト症候群症例の検体において、マイクロアレイCGH法によるゲノムコピー数の異常の検出を行う。ゲノムコピー数の異常の特定領域が明らかにされた場合は、その遺伝子群の発現、塩基配列の解析を行い、候補遺伝子を特定する予定である。
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