研究課題
ウエスト症候群の遺伝学的背景の大部分は不明である。申請者は、原因不明の潜因性ウエスト症候群に小奇形を伴う症例が多いことに着目した。小奇形と精神遅滞を伴うことは、染色体異常の存在を示唆する現象であるが、通常のGバンド法で染色体異常が検出されることは稀である。そこで、微細ゲノムコピー数異常の検出に有効であるマイクロアレイCGH法による解析を行うことを考えた。本研究の目的は、ゲノムコピー数の検出に有効であるマイクロアレイCGH法を用いて、ウエスト症候群の原因遺伝子を新たに同定し、その機能解析を行うことによって病態発症のメカニズムを解明することにある。昨年度は、宮城県の小児神経科医を通じてウエスト症候群の症例の検体を収集し、宮城県におけるウエスト症候群の発生率を初めて明らかにした。そこで本年度は、収集した小奇形と精神発達遅滞を伴った潜因性ウエスト症候群症例を対象に、昨年度確立したアレイCGH法によるゲノムコピー数の異常の検出を行った。本年度解析した症例は31例で、そのうち3例にゲノムコピー数の異常を認めた。事実、一部のゲノムコピー数の異常領域に存在する遺伝子の一つは、てんかんと精神遅滞を呈する症例において遺伝子変異の報告がなされていた。そこで、収集した症例全例を対象にシークエンスを行ったが、今回の結果では他症例における遺伝子の変異を認めなかった。しかし、通常のGバンド法では不可能なゲノムコピー数異常を検出できたことから、アレイCGHによるゲノム解析法は、小奇形を伴うウエスト症候群において非常に有効であると確認できた。現在もさらに症例数を増やし、アレイCGHによる解析を進めている。今後ウエスト症候群患者のゲノム上の特徴を抽出することで、ウエスト症候群の責任遺伝子を同定することが期待できる。
すべて 2010
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (6件)
Brain Dev
巻: (Published on line 08 Nov)
Epilepsy Res
巻: 92(2-3) ページ: 201-8
J Neurol Sci
巻: 297(1-2) ページ: 19-28
Neuropediatrics
巻: 41(1) ページ: 39-42
Epilepsia
巻: 51(9) ページ: 1886-8
小児科臨床
巻: 63(5) ページ: 1039-1044