研究課題
先天性奇形症候群の成因は単一遺伝子、多因子遺伝子、染色体異常、催奇形因子および感染などさまざまであるが、最も頻度の高いものはloss of heterozygosity(LOH)、片親性ダイソミー(UPD)などのアレル不均衡および点突然変異によりもたらせられるゲノム異常と推定されている。しかし現在のところ、先天性奇形症候群の約70%が原因不明であり、症状に対応する特異的なゲノム異常は同定されていない。一方、ゲノム異常に起因して先天性奇形症候群ではしばしば悪性腫瘍を合併するために、正確なゲノム異常の解析は患児の自然史を予測し、健康管理を行う上でも重要と考えられる。そこで、本年度は、肝芽腫を合併したSotos症候群、網膜芽腫を合併した有馬症候群の患者検体より抽出したDNAの網羅的ゲノム解析を行い、発症メカニズムの解明を試みた。方法としては、患児の末梢血液試料および腫瘍組織から抽出したゲノムDNAを適切な制限酵素で消化し、断端に共通のアダプターを付加した後、GeneChip 250k array(CNAG/AsCNAR)でゲノムコピー数の解析を行った。その結果、Sotos症候群の原因となる5q35領域の欠失に加えて、2番染色体の増幅および2q24領域の高度増幅、18番染色体長腕の片親性ダイソミーが腫瘍ゲノムに検出された。これらのゲノム異常がみられた領域には肝芽腫の発症に関与する遺伝子が存在する可能性が示唆された。また有馬症候群の解析ではRB遺伝子を含む13q領域内に約2MBのヘテロ欠失を見出した。この欠失はgermlin変異であったことから、13qの欠失領域内には小脳低形成、精神運動発達遅滞など有馬症候群の表現型を決定する遺伝子が存在する可能性が示唆された。
すべて 2009
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Eur J Haematol. 83
ページ: 149-153