LMO2は造血に必須の転写因子であり、小児T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の約半数の症例で過剰発現されている。しかし大半の症例では過剰発現の機序が不明であるばかりでなく、過剰発現がどのようにして白血病発症につながるのかという極めて重要な課題が未解決のままである。T-ALLの予後は依然として不良であり、本研究では我々のこれまでの研究成果をふまえてLMO2過剰発現の機序と生物学的意義を明らかにすることを目指している。 本年度はT-ALL細胞株のLMO2発現レベルの解析とLMO2のnegative regulatory regionのメチル化の解析を行った。まず、T-ALL由来細胞株8株について、distal promoter由来およびproximal promoter由来のLMO2発現をreal time PCR法で解析した。このうち6株でLMO2の過剰発現を認めたが、すでにLMO2の過剰発現の機序として知られている11;14転座を認めたのは1株のみであり、他の5株では未知の機序が関与していると考えられた。そこで、近年になって報告された、もうひとつのLMO2遺伝子の過剰発現の機序であるnegative regulatory regionの不活化について、この部位にメチル化の標的となるCpG islandが含まれることからメチル化PCRで解析した。LMO2の発現レベルとの相関を検討したが、これらの相関は認められなかった。よって、メチル化以外の機序が関与していると想定され、今後アレイCGH法による全ゲノムでの増幅と欠失領域の解析を進めていく予定である。また、過剰発現の生物学的意義について解明することも重要であるが、この解析に欠かせない手法であるsiRNAの導入方法について、当研究室で解析するための調整を行っている。すでにB前駆細胞性白血病でLMO2遺伝子を過剰発現している17;19転座型白血病細胞株のUOC-B1を用いて、レンチウイルスベクターを用いたsiRNA導入による細胞死の誘導についてflow cytometryを用いて解析を行っており、今後丁・ALL細胞株でも解析を行っていく予定である。
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