難治性神経疾患のひとつであるペルオキシソーム欠損症の病態解明のために、胚性幹細胞(ES細胞)および多能性幹細胞(iPS細胞)を神経細胞に分化誘導し、ペルオキシソーム関連遺伝子およびタンパク発現の消長を観察し、神経発生機構におけるペルオキシソームの役割を明らかにすることを目的として、研究をすすめている。 本年度は平成22年度に医学部倫理審査委員会での承認を得たうえで患者皮膚線維芽細胞から樹立したiPs細胞を用いて、以下の実験を行った。 神経分化実験 【方法】PA6と共培養を行うSDIA法にて行った。Day21に4%パラホルムアルデヒドにて固定し、蛍光抗体染色にて神経幹細胞マーカーであるnestinおよびニューロンマーカーであるTuJの発現を検討した。 【結果】神経分化条件での培養開始後、正常ヒト細胞由来、患者皮膚細胞由来ともに、nestin positiveの細胞が認められたが、TuJ positiveの細胞はどちらにおいても認められなった。今回実験に使用したクローンにおいては、神経幹細胞への分化効率に明らかな差は認められなかった。 【まとめ・今後の展望】分化効率に関しては今後さらに他のクローンにおける実態もふまえての検証が必要である。神経分化法に関しては様々な実施例が報告されているが、細胞内のペルオキシソームタンパクの局在や遺伝子発現、さらにはニューロンやグリアなどのより分化の進んだ細胞について検討していくためには、より各々の解析に用いやすい神経分化方法を選択・検証していくことが重要である。
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