昨年度の研究に基づき、肝臓内門脈周囲領域における白血病幹細胞ニッチ構成に関わる重要な因子を同定すべくNOGマウス肝臓内のヒト白血病細胞をフローサイトメトリーで解析したところ、肝臓内の白血病細胞が、他臓器内の白血病細胞に比べより高頻度でCXCR4を発現していることを見いだした。更に胆管上皮細胞がCXCR4のリガンドであるSDF-1を発現しており、組織学的に両者が密着し存在していることを確認した。加えて肝臓内の白血病細胞の遊走能、コロニー形成能、二次移植による生着効率が他臓器内の白血病細胞に比べ増加していることを確認した。更にヒト白血病細胞の生着したマウスに、SDF-1/CXCR4 AxisをブロックするAMD3100とAraCを同時投与することにより、AraC単独群に比べ肝臓内の白血病細胞の再増殖を抑制できた。以上の結果より、肝臓に存在する白血病細胞が骨髄に存在する白血病細胞と異なった特性をもっていること、肝臓において胆管上皮細胞と白血病細胞がSDF-1/CXCR4 Axisを介して微小環境を構成していることが明らかとなった。急性リンパ性白血病のみならず他の白血病についても、これまで骨髄以外の臓器における白血病幹細胞の動態につきその詳細は明らかでない。異種であるとはいえ移植前処置を必要とせず、ヒト環境を極めて模倣していると思われる今回のNOGマウスを用いた系により、肝臓の微小環境の詳細とSDF-1/CXCR4 axisの重要性が明らかとなった。これらの知見は、白血病髄外病変をターゲットとする新規治療法の開発に役立つと考えられる。
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