研究概要 |
我々の研究室では過去にマウスES細胞,iPS細胞から胚様体法によって効率的に骨格筋細胞を誘導し、移植可能な骨格筋幹/前駆細胞をフローサイトメトリーにより単離することに成功した。この誘導法を用いて筋ジストロフィー患者由来iPS細胞からの骨格筋および骨格筋前駆細胞の分化誘導の基礎検討として、正常ヒトES細胞およびiPS細胞から骨格筋細胞への分化誘導を行った。 未分化ヒトES細胞およびiPS細胞を7日間浮遊培養した後、ゼラチンコートした細胞培養ディッシュ上で付着培養とし、無血清培地で14日間培養後、ウマ血清を含む骨格筋分化培地で28日間培養すると、線維芽細胞様の細胞増殖が観察される。この細胞を再度無血清培地で14~21日程度培養すると形態学的に判別可能な骨格筋細胞が出現する。また、生体内での骨格筋構成能・再生能を検証するため、骨格筋分化培地で28日間培養した段階の細胞を用いて、免疫不全マウス(NOGマウス)への移植実験を行った。移植は前脛骨筋へのcardiotoxinによる筋傷害と全身放射線照射による前処置を行い、同部位への筋注により行った。評価はヒトES細胞由来細胞の免疫染色による同定と、腫瘍形成の有無について評価した。骨格筋分化に関して、ヒトES細胞(Kh1)、iPS細胞(253G4)ともにin vitroで骨格筋細胞と考えられるSkeletal Myosin陽性の細胞を誘導することが可能であった。これらの細胞では自発的な収縮活動がみられ、機能的にも成熟骨格筋細胞として矛盾のないものであった。現在、NOGマウスへの移植実験について解析中の状態である。
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