本研究はジストロフィン遺伝子内にレトロトランスポジションしたと考えられた挿入配列の発見を契機に、レトロトランスポジショシ能を有する新しい自動くヒト遺伝子をクローニングするものである。また、新しい遺伝子をクローニングすることのみならず、この遺伝子が、未知の転写調節機構のもとで転写をうけることや未知の逆転酵素で逆転写される新しいタイプのレトロトランスポゾンであることを証明するものである。 今年度、我々は、ジストロフィン遺伝子に挿入された新しい動くヒト遺伝子の配列をもとにRT-PCR法をもちいてこの遺伝子発現が最も盛んな臓器の特定を行ったところ、脳や胎盤、精巣で発現をしていることを明らかにした。また胎児の臓器を用いた検討においても胎児脳で発現を認めており、発生の初期の段階で発現していることを明らかにした。この結果をもとに、当該遺伝子の全長のcDNAの配列を明らかにすることを目的に、最も発現が多い臓器の一つである脳を用いて5'RACEを行った。その結果、L1やAluとった既知のレトロトランスポゾンとは全く異なる配列を得ることができた。驚くべきことに今回われわれが新たに得た配列は11番染色体の一部と100%の相同性をみとめ、新しい動く遺伝子の起源は11番染色体にあることを同定した。新たに得た配列はレトロトランスポジションに必要と考える酵素をコードする領域は認めず、未知の転写調節機構の存在が示唆されており、その機構の解明を進める予定である。
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