研究概要 |
臨床像、予後および遺伝的背景が非常にheterogenousな疾患である急性骨髄性白血病(AML)のうち、NUP98-HOX融合遺伝子を有するAMLにみられる遺伝子異常を明らかにして、これらが協調することで白血病化にどのように影響を及ぼすかを明らかにする。さらに、網羅的遺伝子発現解析により標的分子を同定して、より有効なAML治療法開発の一助とする。まず、NUP98-HOX融合遺伝子を有する白血病の付加的遺伝子変異およびその臨床像を検討した。対象は、染色体11p15転座型を有する造血器腫瘍16例。RT-PCRを行い、NUP98遺伝子と融合する遺伝子を同定した。遺伝子変異の検討は、FLT3, KIT, WT1, RAS, CEBPA, AML1, MLL遺伝子について行った。11例はHOXA群遺伝子、2例はHOXD群遺伝子、その他、HOXC11遺伝子、NSD3遺伝子、不明がそれぞれ1例がNUP98遺伝子と融合遺伝子を形成していた。遺伝子変異において、FLT3-ITDが9例(56%)、KIT遺伝子変異が3例(19%)、WT1遺伝子変異が8例(50%)、RAS遺伝子変異が5例(31%)で認められた。CEBPA, AML1, MLL遺伝子変異は認めなかった。付加的遺伝子変異を認めた14例(88%)で少なくとも1つは細胞増殖に関わる遺伝子異常(FLT3, KIT, RAS)を認めた。興味深いことに、WT1遺伝子変異を認めた全例で、FLT3-ITDあるいはRAS遺伝子変異のどちらかを認めた。FLT3-ITDとWT1遺伝子変異を同時に認めた6例中5例が死亡した。頻度が少ないので不確かだが、NUP98関連白血病は予後が悪い傾向がみられた。NUP98関連白血病は細胞増殖に関与する遺伝子異常が高頻度に認められることから、このことが予後に影響すると考えられた。
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