研究概要 |
I. カルニチン欠乏症患者の抽出および情報収集 2009年度は何らかの症状を呈し、臨床的に脂肪酸代謝異常症などが疑われた症例から2,040検体(ろ紙血1,552件、血清488件)のタンデムマス分析を行い、198件のカルニチン欠乏症例を発見した。発見後の再検や化学診断をすすめた結果、カルニチン欠乏症は二次的に起こっている事が非常に多い事が明らかになった。再検査や化学診断をすすめることが出来た症例の中から全身性カルニチン欠乏症が強く疑われる3症例について遺伝子解析中である。 II. 線維芽細胞を用いたカルニチントランスポーター機能の評価法確立 これまで行われていた線維芽細胞を用いた細胞機能評価法では、培養液中に十分量(400μM)のカルニチンを付加して行っていた。申請者は培養液中のL-カルニチン濃度を10μMとして正常の血中カルニチン濃度よりもやや低くする事で、細胞内の遊離カルニチンが不足しカルニチントランスポーターが能動的にカルニチンを輸送する環境を作成した。この条件下で一定時間の培養を行った後、(擬似的な細胞外液である)培養液と細胞内の遊離カルニチンを抽出、タンデムマス分析を行った。細胞内の遊離カルニチン抽出にはFolchの方法を用いた。その結果、健常コントロールに比べOCTN2異常患者の細胞内遊離カルニチン濃度には有意な差を認め、細胞内外の遊離カルニチン比ではさらに顕著な差が確認できた。カルニチントランスポーターの機能評価はこれまでRIを用いた複雑な方法しか無かったが、申請者が開発した方法によりより簡便に機能解析が可能となる。今後は検討症例数を増やし、可能であればヘテロ接合性変異を持つ症例の検出が可能か否かなども評価する予定である。
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