研究概要 |
研究期間中に臨床的に脂肪酸代謝異常症などの先天代謝異常症を疑われた症例から1,676症例から血液ろ紙検体を得てタンデムマス分析を行い、129症例のカルニチン欠乏症を同定した。このうちOCTN2遺伝子異常症が強く疑われた4症例について遺伝子解析を行った。2例でヘテロ接合性変異を同定し、それぞれS467C/WT、V465A/WTであった。前者は、13歳4ヶ月に診断された女児であり、繰り返す痙攣発作および頭部MRI上の異常信号を呈していた。後者は1歳11ヶ月に急性胃腸炎罹患時の意識障害を契機に発症した女児であった。OCTN2遺伝子についてはヘテロ接合性変異を有する場合であっても、感染などで低栄養や異化亢進が引き金になって重篤な臨床像を呈する可能性が示唆された。 OCTN2異常症例の培養皮膚線維芽細胞を用いたカルニチントランスポーターの機能解析法を確立した。前年に正常コントロール細胞をもちいて行った検討をOCTN2異常症患者の培養皮膚線維芽細胞を用いて有意差が見られるかを検討した。OCTN2異常症群における細胞内/細胞外の遊離カルニチン比はコントロール群に比して有意な低下を認める事を確認した。この機能解析法は細胞内外のアシルカルニチンを観察可能であり、カルニチンが関与する他の脂肪酸代謝異常症の機能解析にも有用であることが期待される。
|