Henoch-Schonlein(ヘノホ・シェーンライン)紫斑病(以下HSP)は主に小児に見られる細小血管を中心とした血管炎であり、多くにA群β溶血性連鎖球菌の先行感染を認めるがウイルス感染とHSP発症との関連も指摘されている。またHSPの発症機序として感染等を契機としたIgA産生能の亢進等の免疫応答異常が推察されている。近年自然免疫系特にToll-like receptor(以下TLR)の発見を通じて大きな進展が見られ、TLRの一部がウイルスに対する免疫応答を行い、またB細胞にも発現し直接TLRを介して微生物を認識し活性化することも明らかになっている。我々の研究室の実験結果から、同じ全身性血管炎の川崎病急性期において自然免疫、特にNK細胞の活性化が病態に強く関与している可能性が示唆されている。さらに我々は、HSPに紫斑病性腎炎(以下、HSPN)を合併する症例としない症例が存在することから、この相違を明確に規定する分子の存在を解明するため、正常集団とHSP群(腎炎合併なし)、正常集団とHSPN群の各々についてマイクロアレイを用いた各遺伝子発現量の解析を行い、GNLYおよびGZMBの発現量が、腎炎非合併例に比して腎炎合併例ににおいて高いことを示した。本研究課題では指定された期間内にHSP症例の集積を行い、HSPと自然免疫との関連についてマイクロアレイ解析を進め、発症メカニズムの解明を行う。
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