研究概要 |
NIRSを用いて母子の相互作用をみるために、眠っている乳児とその児を抱いた母親に同時に近赤外線分光法(NIRS)を装着し、母親が、(1)安静にしている条件、(2)ビデオ鑑賞している条件、(3)音楽鑑賞している条件での両者の前頭部の脳血流を計測した。母親が安静の条件では、児と母親の前頭部の血流変化に高い相関関係(r>0.7,p<0.01)が見られたが、他の条件では相関関係は見られなかった。また母親ではない同世代の女性がその児を抱いた場合には、児と母親の血流変化には相関関係は見られなかった。このことより、母親が児を抱っこしている時に両者の血流変化が同期していることは、何らかの母子相互作用が行なわれていることが示唆された。我々はこの結果を踏まえて、更に月齢・週齢が少ない児でも検査ができるかどうかを検証することとした。島津製作所から提供された新生児・乳児用の新しいNIRSプローブを用いて、成熟児、低出生体重児、極低出生体重児、超低出生体重児を対象とし、脳血流変化を高い精度で測定できることを確認した。一方、NIRSの最大の問題点である光路長について、それに依存しない新しい解析法(Sanefuji et al.Neurosci Res,2007)は我々が既に見出しているが、幼少児でもそれが同様に有効あることを確認し発表した(Sanefuji et al.Neuroimage,2011)。この方法を利用して、乳児・新生児でも同様に、この光路長に依存しない解析法を適用できるかどうかを検証中である。また、新生児集中治療室入院の既往のある児については、NIRSで得られた脳血流の結果とその後の発達や母子の愛着形成との関連を検討する必要があり、総合周産期母子医療センター新生児内科部門、小児科、子どものこころの診療部で合同カンファランスを開き、密な情報交換を行なっている。
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