Williams症候群は7番染色体長腕11.23領域のへテロの染色体欠失を原因とし、心疾患、特有の顔貌に加えて、視空間認知障害や読字障害を認める。本研究ではマイクロアレイ技術を用いて、Williams症候群患者の染色体欠失範囲と認知機能との関係を明らかにする。初年度は、研究準備として、倫理審査委員会への申請、対象患者リクルートに必要なリーフレット作成、関係機関とのネットワークづくり、マイクロアレイの設計、認知機能評価システムの作成を行った。まず予備的に数名の患者の協力を得て、各患者由来のゲノムDNAを抽出し、Williams症候群責任領域の欠失範囲を同定するために設計したマイクロアレイを用いてComparative genomic hybridization解析を実施した。ヒトゲノム標準配列と比較して、Williams症候群責任領域のへテロ染色体欠失範囲を同定することに成功した。検査のプロトコール、マイクロアレイの設計に問題がないことを確認した。Williams症候群は特徴的な認知機能を有するため、既存の知能検査では適切に評価ができないといわれており、複数の認知機能検査を組み合わせて本研究独自の評価システムを作成した。平成21年7月機関内の倫理審査承認の後、約20名のWilliams症候群患者の登録が完了した。現在、新規患者のリクルートを進めるとともに、上記の遺伝子検査および認知機能検査を順次遂行中である。平成22年度は、関係医療機関や患者の会等にもアプローチし計30名以上の登録を目指す。その後、遺伝子型(欠失範囲)と表現型(認知機能)の相関解析を行い、特定の遺伝子が欠失している群で読字障害などの特定の表現型がより強く発現しやすい傾向を同定する。
|