Williams症候群は7番染色体長腕11.23領域のヘテロの染色体欠失を原因とし、心疾患、特有の顔貌に加えて、視空間認知障害や書字・読字障害を認める。本研究ではマイクロアレイ技術を用いて、Williams症候群患者の認知機能障害の重症度と染色体欠失範囲の関係を明らかにすることを目的とした。対象患者は、所属施設および家族会等から14名(男性5名、女性9名、2歳から17歳)をリクルートした。まず、初年度に設計したマイクロアレイを用いてComparative genomic hybridization解析を実施した。各患者のゲノム配列とヒトゲノム標準配列と比較してWilliams症候群責任領域の欠失範囲を同定した。すべての患者において7q11.23領域の欠失を確認し、そのうち1名の患者にWilliams症候群責任領域の通常の欠失範囲(1.6Mb)に比べ約3倍(4.2Mb)の欠失を認めた。次に、初年度に作成した認知機能の評価プロトコールに従って、欠失範囲と精神運動発達のプロファイリングを行った。全例で精神運動発達遅滞を認め、特に視空間認知や微細運動に関わる課題に困難さを認めた。言語機能に関しては、典型的欠失範囲をもつ患者における有意語の獲得は12~40カ月であったが、大きな染色体欠失範囲をもつ患者ではそれに比べ有意に遅延していた。Williams症候群の精神運動発達には個人差があるが、平均的発達から逸脱する例においては非典型的な欠失を考慮する必要がある。またComparative genomic hybridization解析による詳細な欠失範囲の同定により、将来の認知機能障害の重症度を予測できる可能性が示唆された。以上の主旨を纏め2011年日本小児科学会学術集会演題に採択された。
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