L-asparaginase(ASNase)は小児白血病治療のkey drugであり、その副作用として急性膵炎が知られている。臨床症例においてはASNase薬剤性膵炎の予防法は確立しておらず、一度膵炎が発症するとASNase投与中止を余儀なくされ、白血病の治療成績を下げる結果となっている。実験計画に基づきASNase投与中の急性リンパ球性白血病(ALL)患児の膵障害に対する危険因子を明らかにすることを21年度の研究テーマとした。ASNase投与を予定しているALL患児(18例)の血中アミノ酸分析、膵酵素、プロテアーゼインヒビターおよびrapid turn over proteinsを測定し、ASNase薬剤性膵炎の誘発因子に関する検討を行った。その結果、(1)ASNase投与により、急性膵炎の臨床症状を認めない症例でもPSTIおよびtrypsin値の上昇、α1-ATおよびα2-Mの低下が認められた。(2)血中アミノ酸値はASNase投与前値に回復するまで約2週間を要した。(3)Rapid turn over proteinsである血中プレアルブミン、トランスフェリン、およびレチノール結合蛋白はASNase投与中低値を示し、投与終了後、速やかに治療前値に回復した。以上より、血中膵酵素値が全例にて上昇していたことからASNaseの直接的な影響にてsubclinicalな膵炎が生じている可能性が示唆された。また、蛋白合成障害に起因したantiproteaseの減少により、膵障害に関係する防御機構が減弱していることが明らかになった。
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