研究概要 |
【背景】L-asparaginase (ASNase)の合併症の1つに急性膵炎が知られている。一度膵炎が発症するとその後の化学療法の変更を余儀なくされ,原疾患再発のリスクが最も危惧される。OctreotideはASNase薬剤性膵炎の再発予防に効果的とされるが(Exp Hematol 36 : 253-254 ; 2008),その有効性は明確ではない。 【研究の目的】ASNase投与中患児の血液検査データからoctreotideの効果的な投与方法を明らかにし,予防策を講じた症例の経過を検討する。 【研究実施計画】(1)ASNase投与中の急性リンパ性白血病患児(n=32)の血中アミノ酸分析,膵酵素,プロテアーゼインヒビターを測定し,ASNaseの薬理効果と膵外分泌機能の関連性を検討する。(2)ASNase薬剤性膵炎を発症し化学療法が中止となった患児(n=5)に対して,octreotide持続静注投与下にASNaseによる再治療を行い,その予防効果を検討する。 【結果】(1)ASNase投与により,急性膵炎の臨床症状を認めない症例でもtrypsin,PSTI値の上昇が認められた。血中膵酵素およびアミノ酸値が治療前値に回復するまでASNase最終投与から約10日間を要した。(2)再治療可能:3例,膵炎再発:2例であった。 【考案】Octreotideの併用投与は,ASNase薬剤性膵炎の再発予防に一定の有効性がある。投与終了の目安はASNaseの薬理効果が消失し,subclinicalな膵炎が軽快する10日前後を目安にする。初回膵炎の重症度が軽症であった症例は,octreotideを併用した再治療が有効な可能性がある。
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