本年度は主としてin vitroにおけるPEG化DAOの抗菌活性に関して検討を行った。黄色ブドウ球菌を被検菌として検討を行ったところ、DAOの用量依存的にブドウ球菌の発育が抑制された。ブドウ球菌発育阻生はD-アミノ酸の用量依存的に顕著に増強されることを明らかにしている。さらにこれらの効果はミエロペルオキシダーゼ(MPO)を添加することによりさらに増強され、菌の発育が完全に抑制された。この際、NPO添加によりHOCLが発生することが確認されたことから、HOCLによる殺菌作用が関与していることが示唆された。また、DAOによる抗菌効果がDAO単独で見られるか否かを検討したところ、DAO単独処理において、弱いながらも菌の発育抑制効果が認められた。同様にMPO添加によりその抗菌作用の増強が認められた。菌破砕物を用いた実験より、菌破砕物とDAOを混合した際に、D-アミノ酸の消費が認められること、MPO共存下においてHOCLの発生が確認されたことより、DAOは菌体D-アミノ酸を利用し過酸化水素による殺菌作用を有していることが示唆された。これらの結果はDAOが菌感染防御因子として働いていることを示唆しているのみならず、治療薬としての可能性を示唆している。予備実験ではあるが、ICRマウス皮下感染モデルを用い、PEG-DAOによる感染治療実験を行ったところ、PEG-DAO投与群において腫脹径の顕著な減少、腫脹の消失を観察している。
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