研究概要 |
平成21年度に防衛医科大学校小児科の協力を得て、同意書取得後に、現行の新生児マススクリーニング検査の委託先施設から正常コントロールの乾燥濾紙血174枚と重症複合免疫不全症患者の乾燥濾紙血9枚を供与あるいは貸与を受けることができた。マススクリーニングの実現には、最終的に実際の患者検体で感度および感受性を確認する必要があり、非常に稀な疾患である重症複合免疫不全症患者の乾燥濾紙血を複数入手できたことの意義は大きい。 手技的な煩雑さと費用を最小限にするため、乾燥濾紙血から直接PCRが可能であるAmpdirect^<(R)> Plus/NovaTaq^<TM> Hot Start DNA Polymerase(Shimadzu)を用いて、乾燥濾紙血からのゲノムDNAの抽出は行わず、直接、新生T細胞のマーカーであるTRECsと内在性遺伝子であるRNaseP(RNaseP RNA component H1, RPPH1)との競合的PCR反応を行う方法を検討した。競合的PCR反応とは1つのチューブ内で2遺伝子のPCR反応を行う反応であるが、我々の最終目標は正常人では両遺伝子のPCR産物が十分に認められるが、重症複合免疫不全症患者ではTRECsのみがほとんど認められなくなるという条件を確立することである。この評価方法を正確かつ安定にするために、PCR後にマイクロチップ電気泳動装置であるMCE-202 Multina(Shimadzu)を用いて、半定量して評価するシステムを構築することもできた。その結果、TRECsとRNasePの2遺伝子のPCRバンドを適切に得られる条件(濾紙血パンチのサイズ、テンプレート量、プライマー量、PCR反応条件)を確立することができた。 以上のように、以後の実際の患者検体で感度および感受性を確認する体制が整い、マススクリーニングの実現に向けて前進したと考えられる。
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