1)HMC-1細胞の脱顆粒化への影響の検討 HMC-1の脱顆粒化に関連する腫瘍遺伝子としてCX3CL1がピックアップされたため、CX3CL1を発現するプラスミドを構築し、transientの発現系を用いて脱顆粒化の検討を行った。またRSV感染A549細胞におけるCX3CL1発現をsiRNAでノックダウンすることで脱顆粒化への影響があるか否かも検討した。しかし両者ともに安定した実験系を構築することが出来なかった。反省点としてはTet-onシステムを用いたCX3CL1の発現制御系を構築したほうが良かったのではないかと思われた。 2)恒常的にC8、C18を発現するHMC-1-C8/18の構築およびRSV複製への影響の検討 昨年度の実験により、RSV複製に関わる因子としてサイトケラチン8、18(C8/18)がピックアップされた。C8/18を恒常的に発現するHMC-1のクローニングは成功し、得られたHMC-1-C8/18を用いてRSVの複製動態を調べた。Spinoculation法を用いることが前提であるが、リアルタイムPCRによる遺伝子検出、およびプラークアッセイ方ともに、RSVはHMC-1ではほとんど複製しないが、HMC-1-C8/18では効果的に細胞内複製を行う事が示された。しかし培養上清中へのウイルス放出は陽性対象のA549細胞と比較して低かった。従って、C8/18はRSV複製における初期段階において作用していることが示唆された。またC18を恒常的にノックダウンしたA549細胞ではRSV複製が低下した。よってC8/18分子がRSV複製に関与することが強く示唆される結果が得られた。 当初計画していた脱顆粒化に関連するシグナルを特定することは出来なかったが、代わりにRSVの複製に関与する分子として、C8およびC18を特定する事が出来た。本研究の成果は別の形ではあるが、RSV感染症の治療法、予防法開発のための基礎データとなりうると考えられる。
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