ムコ多糖症は、ムコ多糖を分解するライソゾーム酵素の先天的欠損により、全身にグリコサミノグリカンが蓄積し、ガーゴイル様顔貌、骨変形、肝脾腫、関節拘縮、呼吸障害、心臓弁膜症、角膜混濁、難聴、精神運動発達遅滞などの多彩な症状を呈する先天代謝異常症である。2005年に本邦初のムコ多糖症I型酵素製剤ラロニダーゼが承認され、多くのムコ多糖症患者が酵素補充療法を受けている。酵素補充療法によって改善を認める症状もあるが、改善に至らないもしくは進行する症状もあり、加えて毎週の点滴投与に対する本人、家族の負担はかなり大きいため、更に有効性が高く、かつ長期持続効果を有する治療法の開発が急務である。本研究では、ヒト間葉系細胞をムコ多糖症VII型モデルマウス筋肉内に移植し、筋肉への分化、生着を評価、確認した。骨髄由来ヒト間葉系細胞および子宮内膜由来ヒト間葉系細胞を分離、培養し、約2.5_107ほどマウスの右大腿筋に移植した。移植後1週間、4週間、長期間で、投与部位である大腿筋において、移植細胞の筋肉への分化、生着をビメンチン染色、ジストロフィン染色で評価した。また同様に、投与部位である大腿筋において、βグルクロニダーゼ活性染色を行い、移植細胞のβグルクロニダーゼ活性を評価した。ビメンチン染色にてヒト間葉系細胞の存在を確認し、ジストロフィン染色、βグルクロニダーゼ活性染色の両者が染色されることにより、ヒト間葉系細胞の筋肉への分化を確認した。また、脳、心、肺、肝、脾、腎、血清における病理組織の改善とβグルクロニダーゼ活性定量および活性染色で有効性を検討した。 移植後マウスの脳、心、肺、肝、脾、腎、血清のβグルクロニダーゼ活性を定量し、βグルクロニダーゼの全身への効果を検討した。同時に、それらのパラフィン切片、凍結切片を作製して各臓器のβグルクロニダーゼ活性定量と活性染色を行い病理組織の改善を評価した
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