ノグリカンが蓄積し、ガーゴイル様顔貌、骨変形、肝脾腫、関節拘縮、呼吸障害、心臓弁膜症、角膜混濁、難聴、精神運動発達遅滞などの多彩な症状を呈する先天代謝異常症である。2005年に本邦初のムコ多糖症I型酵素製剤ラロニダーゼが承認、販売され、酵素補充療法が国内で保険診療を展開するようになった。その後、2007年にII型酵素製剤イデュルスルファーゼ、2008年にVI型酵素製剤ガルスルファーゼが承認され、多くのムコ多糖症患者が酵素補充療法を受けている。その中で、酵素補充療法によって改善を認める症状もあるが、改善に至らないもしくは進行する症状もあり、加えて毎週の点滴投与に対する本人、家族の負担はかなり大きいため、更なる有効性が高く、かつ長期持続効果を有する治療法の開発が急務である。本研究においては、ムコ多糖症に対する再生医療技術を応用した「埋め込み型酵素補充療法」を考案した。骨髄より間葉系細胞を分離、培養し、レトロウイルス、レンチウイルスベクターにより遺伝子導入した後、MPS7型モデルマウスに移植し、治療効果の判定を行った。特に間葉系細胞をマウスの筋肉内に移植し、酵素を供給することで全身の蓄積しているムコ多糖を代謝する実験系を確立することに成功した。
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