研究概要 |
1歳半児のテレビ視聴に関する集団調査の結果、言語遅れのない児が多く好むビデオ(遅れなしV)に比べ、遅れの児が多く好むビデオ(遅れV)は、登場人物が視聴者向きで語りかける場面が少なく、映像変化が多く、長時間傍観的に見続け易い内容特性を多く有していた。本研究の本年度は各ビデオ視聴時の成人の脳活動を計測し、脳活動の相違を調べた。 20~40歳の成人女性16名を対象に、遅れなしVと遅れVを各3分と、前後に30秒の風景静止画像を挟んで繋いだビデオを視聴中の前頭部(22チャンネル)、左側頭部(12チャンネル、言語野付近)、右後頭部(12チャンネル、第1次視覚野付近)を近赤外線スペクトロスコピーで計測した。言語機能が未発達の乳幼児の視聴状況に近づけるため日本語以外の音声の吹き替え版ビデオを用いた。 1. 前頭部は他部位に比べ、血流上昇箇所(数秒間上昇し、下降)が多く見られた。頻度は個人差があるが、殆どの協力者で遅れVに比し遅れなしVの方が多かった(t(15)=3.29,p<0.05)。 2. 各V視聴時の平均Oxy-Hb量を、それぞれ直前の風景静止画像視聴時と比較した。言語野付近は遅れV16名(100%)、遅れなしV15名(93.8%)が有意に低下した。前頭部は両Vとも12名(75.0%)が有意に低下し、その内、第1次視覚野が上昇したのは両Vとも3名(25.0%)で、前頭部の血流低下は映像刺激による第1次視覚野の活性から生じたのではないことが推察された。 3. 視聴中の感想をまとめると、「言葉が解らなくても、映像に動きがあり、見続けられた」という回答が遅れなしVで0%に対し、遅れVで37.5%と多かった。 言語が理解出来ない状況でのテレビ視聴は、内容によっては長時間見続け易く、前頭部の一時的な血流上昇は見られるが、全体的に脳活動が低下するため、乳幼児の長時間視聴は、発達に影響する可能性が考えられる。
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