FGF23は骨で産生され、標的臓器である腎臓において、FGF受容体及びKlothoと複合体を形成することによりリン酸排泄量を増加させるリン酸利尿ホルモンであるが、その血中レベルの制御機構については現在のところあまり解析がなされていない。骨形成不全症などの骨疾患患者において、骨吸収阻害剤ビスフォスフォネートの投与が血中FGF23値の上昇を伴うことが観察されている。この観察から、骨細胞により産生されたFGF23がいったん骨基質中に蓄積され、破骨細胞性骨吸収に伴って血中に分泌されるのではないかと考え、この仮説について動物実験による検証を試みた。Boyceらにより確立された骨吸収誘導系(Boyce et al.Endocrinol 1989)を用いて実験を行った。C57BL/6Jマウスを3群に分け、骨吸収促進因子であるIL-1β(3μg/dose)、副甲状腺ホルモンPTH(50μg/dose)、またはvehicleを1日1回、頭部の皮下に4日間連続投与し、最終投与から24時間後にマウスを屠殺、採血し、血清Ca値およびFGF23値を測定した。IL-1β投与群では、vehicle投与群と比較して血清Ca値が上昇し、骨吸収の亢進が確認された。また、血清FGF23値の上昇も認められた。このことから、IL-1β投与にともなう破骨細胞性骨吸収の亢進が、骨基質からのFGF23分泌を促進することが示唆された。一方、PTH投与群においては、骨吸収の亢進は確認されたが、FGF23値の上昇は認められず、PTHの腎臓におけるリン酸利尿作用などの影響が考えられた。
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