研究概要 |
十分なインフォームドコンセントを得た上で、帝王切開時に清潔操作に留意し、ヒト羊膜をサンプルとして採取した。約20症例の羊膜を帝王切開後の症例より清潔な状態で入手した,ヒト羊膜はトリプシン処理を行い、羊膜細胞を採取する。DMEM培養液にEGF、10%FBSを添加したものを培養液として使用し、24-48時間初代培養を行う。培養後、細胞を採取し、蛍光標識抗体を使用し、フローサイトメトリーにて、セルソーティングを行った。蛍光標識抗体としてHoechst33342を主体に使用し、SP(side population)細胞を幹細胞の候補として使用している。現在のところSP細胞の抽出を試みている細胞分画は0.02%程度とごく少ない細胞数である。幼若ラットを用いて新生児低酸素性虚血性脳症モデルを作成した。これらの細胞を浮遊液の状態で、Hamiltonシリンジを使ってstereotacticに脳室内投与した。7日後にラットをフォルマリンで還流固定し、脳を取り出し、脳障害の評価を行った。冠状断での大脳半球面積、大脳半球体積を計測し、解析を行った。細胞移植による有意な脳障害の改善は現在のところ認めていない。次に、培養細胞をトリプシン処理せずに細胞シートのまま移植する検討を行った。脳室内投与は浸襲的過ぎることと技術的に困難であることから、代わりに低酸素性虚血を受けている大脳皮質の脳表に貼付けるように移植した。頭蓋骨に開けた小さな穴からの貼付けで技術的に難しいこともあるが、7日後に脳を取り出してみると細胞シートが脳表ではなく、常に頭蓋骨側に不着していた。このことから現在は、細胞を腹腔内投与、ないしは静脈内投与する準備を行っている。また、羊膜由来幹細胞だけでなく、骨髄由来幹細胞を用いての実験も開始した。骨髄幹細胞を含む単核球分画の移植を細胞数、投与のタイミング、投与経路を替えて検討して行く予定である。
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