小児期の突然死の中では心事故によるものが最も多く、約半数は、不整脈によると考えられ、そのなかにはQT延長症候群によるものも存在すると考えられる。QT延長症候群による多形性心室性頻拍では、遺伝子型により誘因は異なっており、また予防に有効な薬剤も異なる。本性には、先天性と後天性のものがあるが、小児では主に前者が問題となる。現在までに、少なくとも8個の原因遺伝子が判明しており、90%は3つの主要遺伝子変異が原因である。本研究では、小児のQT延長症候群の症例を対象とし、病因遺伝子を明らかにし、誘因の回避、有効薬剤による治療を目指すことを目的とする。 【対象・方法】 遺伝子検索について承諾を得られた小児QT延長症候群の症例および家族からゲノムDNAを抽出する。心筋イオンチャンネル遺伝子(KCNQ1、KCNH2、SCN5A)の翻訳領域とイントロン-エクソン境界部位をPCR法により増幅し、遺伝子異常のスクリーニングはDenaturing High Performance Liquid Chromatography(DHPLC)法を用いて行う。 【結果】QT延長症候群を疑った5家系の遺伝子検索では、LQT1が3家系、LQT2が2家系に認められた。 【考察】 QT延長症候群では、その症状や発作頻度、心電図所見では診断が困難なこともある。今回解析した家系の中には失神などの既往からてんかんと診断されていたものや、遺伝子検索により初めて本症候群の診断に至ったものもあった。 以上から、本症候群の診断に遺伝子解析は大変有用であると考えられた。今後検出した変異と臨床所見との関連をさらに追求する上で、変異イオンチャンネルの機能解析も必要と考えられた。
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