対象:筑波大学附属病院で出生した正常新生児526例を対象とし、臍帯血アディポネクチン濃度とアディポネクチン遺伝子多型を測定した。結果:臍帯血ApNは在胎週数(r=0.14)、出生体重(r=0.23)、出生体重SDスコア(r=0.21)、出生身長(r=0.13)、ponderal index(r=0.15)と有意な相関を認めた。ApN遺伝子多型と出生体重SDスコアとの検討では5'near領域のrs266729のGアリルを持つ群で、有意に出生体重SDスコアが重かったが(CC: -0.06±0.75 versus CG: 0.20±0.64 versus GG: 0.07±0.78)、臍帯血ApNで補正後には有意ではなかった。多型とApNの関係は、SDスコアと同じようにrs266729のGアリルを持つ群で有意に臍帯血ApNが高値で(CC: 34.1±20.2 versus CG: 44.3±26.1 versus GG:54.1±36.7μg/ml)、出生体重SDスコアで補正後も有意であった。考察: 今回の報告はアジア人新生児で大規模にApN遺伝子多型と出生体重SDスコア・臍帯血ApNの関係を検討した初めての報告である。新生児におけるApN遺伝子多型と臍帯血ApNの検討は、Rothenbacherらによるドイツ人新生児の報告だけである。その報告では、rs17300539・rs266729・rs1501299の3つの多型を検討し、我々の報告と同じようにrs266729の多型においてGアリルを持つ群が、持たない群より臍帯血ApNが高値であると報告しているが、出生体重との検討は行ってない。ApN遺伝子多型と出生体重の検討は、ブラジル人での報告だけである。その報告では、rs17300539のAアリルがlarge-for-gestationa1-age児の増加に関係していると報告しているが、出生時のApNは測定していない。今回の検討でrs266729と出生体重SDスコアに有意な関係を認めたが、臍帯血ApNで補正を行うと有意ではなかったことから、rs266729はApN濃度を介して出生体重SDスコアに影響を与えていることが示唆された。結論: アジア人で初めて臍帯血ApNが出生体重SDスコアと有意な関係を示すことを報告した。rs266729は出生体重SDスコアで補正をした後も臍帯血ApNと有意な関係を認めたが、出生体重SDスコアとは臍帯血ApNで補正後は関連を認めなかった。以上から、ApN遺伝子多型の出生体重への影響はApN濃度を介していることが示唆された。
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