研究概要 |
本研究の目的は、胎盤内の胎児-母体間の毛細血管を形成し、ガス・栄養交換を行う上で重要な役割を担っていることが動物実験で明らかにされたレトロトランスポゾン由来の胎盤形成遺伝子(Rt11)について、Rt11がヒト胎盤で発現していることを確認すること、Rt11の欠失や遺伝子変異がヒト子宮内胎児発育遅延(IUGR)の発症原因であるかを解明することであった。 正常新生児およびIUGRにて出生した新生児の胎盤におけるRt11遺伝子発現の検討 1.3'RACE法によるcDNAの作成 ヒト胎盤RNAから5'末端にアダプター配列の付いたオリゴをプライマーにして逆転写反応を行い、cDNAを作成した。 2.GAPDH(組織内で恒常的に発現している遺伝子)の発現を確認 そのcDNAにおいて、GAPDHの発現を確認し、本研究の実験系の確立に成功した。 3.Rt11遺伝子発現の検討 cctgcaacgttaccgtcagtをセンスプライマーとしてアダプタープライマーと、PCR(94度x3分、94度x1分,55度x1分,72度x1分:35サイクル、72度x5分)を行った。その結果、目的の産物と思われる約400bpのバンドが得た(Rt11がヒト胎盤で発現)。正常新生児の胎盤では発現が強く、IUGRにて出生した胎盤では発現が弱いことが明らかになった(正常新生児とIUGRの胎盤での発現量の相違)。 以上より、ヒト胎盤でもRt11遺伝子の発現があり、その発現量の違いがIUGRの発症と関連が示唆される研究結果が得られた。
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