研究概要 |
ニューラルネットワーク形成障害の発症は、主として発生過程の脳あるいは、完成された脳において正常な過程から逸脱することにより生じる。完成された脳で受傷したニューロンは非興奮時のシナプス膜において、細胞膜形態を大きく変化させると報告した。成体ラット由来海馬細胞を用いた分化誘導実験においても、神経伸長のごく初期に作用する受容体機能の発現調節により説明できた(MCN, 2010)、同時に低酸素状態での幹細胞性の保持に関わる新しい受容体機能の役割について報告した(JBC, 2011)。アルコール曝露時には、出血を伴わずに受傷部位にグリア細胞が集約すると考えられているが、神経変性疾患の原因の多くは、脳内の血管障害の有無により障害の程度が異なる。そこで、成体ラットにおけるニューラルネットワーク形成障害の発症時を、神経細胞軸索内に留まる性質を持ち、神経変性疾患の代表的なアミロイドβ(Aβ)の挙動について解析加えた。出生直後の胎児は体温調節機能が確立しておらず、迷走神経による消化器機能の調節と体温維持に密接な関係が存在する。この迷走神経に注目し、蛍光標識されたニューラルトレーサーとしてのWGAとAβの神経週末での物質移動について解析を行いシンポジウムにおいて発表し、指定図書として執筆を行った(IGI global, 2011)。本年は、成体ラットの神経幹細胞の神経分化および、環境要因がもたらす神経回路網への影響についてAβを交えて解析を行った。
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