研究概要 |
本年度は、肺胞II型上皮細胞由来のA549細胞やCHO細胞でパッチクランプ実験を行い、CFTRチャネルの機能解析を行った。一般に、肺胞II型上皮細胞にはCFTRは発現していないと考えられていたが、一方、II型細胞にもCFTRの発現が認められるという報告もなされている[Brochiero et al. Am J Physiol Lung Cell Mol Physiol 287:382-392,2004など]。昨年度、A549細胞ではCFTRはPKAとPhosphataseによって二重に活性制御されている、つまりA549細胞は本来のCFTRの活性制御機構を保っている可能性を示したため、本年度はマウスから肺胞II型細胞を安定採取し、培養する手技を確立した。今後、培養肺胞II型上皮細胞を用いてパッチクランプ実験を行う予定である。 ATP依存性チャネルゲート駆動が失われた変異体G551D-CFTRの薬剤ゲニステインgenisteinとクルクミンcurcuminによるゲーティングの回復とそのメカニズムについての研究[Yu,Miki et al 2011]を行った。クルクミンのG551D-CFTRのチャネル活性の増強効果(約10倍)は、ゲニステインのG551D-CFTRチャネル活性の増強効果(約20倍)より小さかったが、クルクミンは、ゲニステインによって最大限に活性化されたG551D-CFTRのチャネル活性をさらに増強(約40倍)させた。さらに5μM以下の低濃度領域では、クルクミンとゲニステインの同時投与は、それぞれの単独投与より遥かに大きな増強効果(相乗効果)を発揮した。この発見は同じNBDを駆動エンジンとして共通に持つABCA3トランスポータとCFTRチャネルの機能的連関についての重要なツールになり得ると考えられた。
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