研究概要 |
本年度は昨年度に引き続きATP依存性チャネルゲート駆動のない変異体G551Dを持ったCFTR(G551D-CFTR)にgenisteinとcurcuminを負荷し、チャネルゲーティングの回復を観察した[Yu,Miki et a1 2011]。GenisteinによるG551D-CFTRチャネルの活性増強効果は20倍だったのに対し、CurcuminによるG551D-CFTRのチャネルの活性増強効果は10倍であったが、CurcuminをGenisteinによって活性化されたG551D-CFTRに負荷すると、チャネルの活性はさらに40倍まで増強した。さらに、このCurcuminとGenisteinによる相互増強作用は5μM以下の低濃度領域で、遥かに大きな相乗増強効果を示した。この発見は同じABC蛋白質であり、共にNBDを駆動エンジンとして持つABCA3トランスポータとCFTRチャネルの機能的連関を示唆した。 また、マウスからの肺胞II型上皮細胞を安定して培養できるようになったことから、Coherent Anti-Stokes Raman Scattering(CARS)顕微鏡を用い、肺胞II型上皮細胞内を観察した。肺胞II型上皮細胞内にはABCA3トランスポータの発現しているlamellarbodyが多数存在し、今回のCARS顕微鏡によりlamellar bodyへの脂質のpacking、細胞外へのexocytosisを観察した。肺胞II型上皮細胞内のlamellar bodyを生きた細胞で観察できる手段は今までになく、培養液の浸透圧変化や薬剤投与によりlamellar bodyのpackingやexocytosisに関わるABCA3トランスポータを含めた調節因子研究への重要なツールになり得る。
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