研究概要 |
極低出生体重児76名のコホート研究において,従来式MRI評価(T1およびT2強調画像)と6歳,9歳時の発達を比較したところ,白質傷害と遠隔期の認知・言語・運動発達との間に強い相関が認められた.先行フォローアップ研究で,超早産児は学齢期以降,高率に高次脳機能障害を認めると報告されていたが,この脳機能障害が,(1)これらの児に同じく高率に合併する,広範性白質障害と関連していたこと,(2)このような発達障害を乳児期早期に予測し,早期介入できる可能性が示唆された. 次に,定量MRマーカーを活用し,生後の栄養状態が脳の発育,ひいては発達に及ぼす影響を短期間で明らかにすることを目的に,2007年6月-2010年8月に久留米大学周産母子センターで入院管理された極低出生体重児82名において,予定日周辺に(1)従来式MRI評価,(2)脳内各部位でMRIマーカー(apparent diffusion coefficient(ADC),fractional anisotropy(FA))の定量を行った.測定部位は,白質(脳梁,内包後脚,頭頂葉)および深部灰白質(尾状核,レンズ核)である.出生時在胎週数とFA値の比較では,レンズ核でのみ相関を認めた一方,撮影時の修正在胎週数とFA値の比較では,レンズ核以外にも,脳梁膝部,内包後脚,頭頂葉で,正相関を認めた.児の髄鞘形成は,胎内成熟時点で停滞するのではなく,特に白質において出生後の日齢に応じて成熟することが明らかになった.また,出生から退院までの体重増加に関して,良好群と不良群に分類したところ,体重増加不良群は,良好群に比べFA値が低い傾向を示し,髄鞘形成が遅延することが示唆された.特に,脳梁でその傾向は顕著であった. このコホートにおいても,修正18か月,36か月時に対面式発達評価を行っており,周生期の栄養,画像所見,神経学的発達の比較を現在解析中である.
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