今年度は前年度に引き続きKCNQ2遺伝子S5領域に変異(S247W)を持つヘテロノックインマウスの機能解析を行ったが、比較対照と同時に検討を行っていたHCN2について興味深いデータを発見したので最終年度の今年はHCN2について記述する。 熱性けいれん患者から発見されたHCN2遺伝子変異より作成した変異体の機能解析を並行して行い、還流液の温度を上昇させて温度依存性に変化が認められるかを野生型と変異型について比較した。解析の結果、温度上昇時には活性化曲線が変異型において有意に脱分極側に移動していた。また主に脱分極電位に近い値で、変異型における時定数の速い成分が野生型と比べ有意に速くなっていることを明らかにした。以上の結果から、このHCN2遺伝子変異は熱性けいれんの発症に関係することが強く示唆された。以上の内容を第89回日本生理学会、The 1st international symposium of research institute for the molecular pathomechanisms of epilepsyにて発表した。 現在熱性けいれん患者において、HCN2遺伝子異常の報告は日本国内では皆無であり、世界的にも現在までに発見・解析されているのは2例のみである。また熱性けいれんとHCN2の直接的な因果関係を明らかにするために温度感受性の実験を行った研究は世界的にも報告がない。以上から今回の研究は非常に意味があるものと考えられる。
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