本研究の目的1は、平成21年度~24年度の3年間、胎盤小絨毛片のSystem Aアミノ酸輸送活性とフロレチン感受性糖輸送活性を測定し、後日、国立環境研究所で測定された母体血・臍帯血中の環境汚染物質濃度と、糖・アミノ酸輸送活性値の相関や環境化学物質の作用について解析することである。 平成21年度において、正常妊娠ばかりでなく子宮内胎児発育遅延や妊娠高血圧症候群の胎盤においてもSystem Aアミノ酸輸送活性とフロレチン感受性糖輸送活性を測定し、胎児発育制限を引き起こす症例での変化についても詳しく調べた。その結果、子宮内胎児発育遅延においては、これらの栄養素輸送活性は低下しているが、妊娠高血圧症候群の胎盤では低下していないことを発見し、論文報告をした。 正常妊娠の胎盤の栄養素輸送活性値のデータの標準偏差は比較的小さく(System Aアミノ酸輸送活性値(mean±SD):27.9±3.2pmol MeAIB/mg protein/20minutes)n=186)、本分析手法での結果の再現性は優れているものと思われるものの、環境化学物質との相関性を調べるには栄養素輸送活性のデータ数がより多く必要であることが予想された。 このため、今年度に得られたデータ蓄積し、来年度以降も測定を実施していく。その後、蓄積された国立環境研究所で測定された母体血・臍帯血中の環境汚染物質濃度値との相関性を調査する方針である。
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