研究課題/領域番号 |
21791049
|
研究機関 | 産業医科大学 |
研究代表者 |
柴田 英治 産業医科大学, 医学部, 准教授 (90419838)
|
キーワード | 環境化学物質 / 子宮内胎児発育遅延 / 胎盤栄養素輸送 / アミノ酸輸送 |
研究概要 |
本研究の目的は、環境化学物質と胎盤栄養素輸送機能との関係を調べることにより環境化学物質による子宮内胎児発育遅延を調べることである。In vivoでは母体血・臍帯血中の環境化学物質(金属n=7)と胎盤System Aアミノ酸輸送活性の相関性を分析したところ、臍帯血カリウム濃度(負の相関:R値0.93、P値0.006)、臍帯血カルシウム(正の相関:R値0.84、P値0.03)、臍帯血マンガン(負の相関:R値0.76、P値0.02)、臍帯鉛(負の相関:R値0.9、P値0.01)、また母体血総PCB濃度と単位胎盤あたりの合胞体栄養膜細胞数は負の相関(P=0.022、n=22)が認められたが、母体血総PCB濃度と単位胎盤あたりのplacental growth factorは正の相関(P=0.001、n=22)が認められた。In vitroでは重金属、アルデヒド類・プラスチック樹脂を小絨毛片に曝露しSystem Aアミノ酸輸送活性を測定した。Methyl-Mercury(0.5M)、Arsenic(5M)、Cadmium(20M)は30 to 40% system A amino acid transport activityを減少した。しかしながら、生理的濃度の範囲内では変化は見られなかった。アルデヒド類のうちGlutaraldehyde、Formaldehide、またプラスチック樹脂のうちToluene diisocyanateは超低濃度でも有意にsystem A activityを減少させた。これらは妊婦の曝露により胎児へのアミノ酸輸送障害を起こす環境化学物質と考えられた。 正常(10例)に比較して子宮内胎児発育遅延(10例)、妊娠高血圧症候群(10例)、妊娠糖尿病(10例)の合胞体栄養膜細胞におけるアミノ酸輸送蛋白発現が亢進していた。子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群では胎盤血流障害に対する胎児・胎盤系の適応機構ではないかと考察しているが、妊娠糖尿病ではインスリン療法がアミノ酸輸送蛋白発現の亢進に関与していると考えられた。また、mTORシグナル活性がアミノ酸輸送蛋白発現のレギュレーターであることが示唆された。次年度、アミノ酸輸送蛋白の合胞体栄養膜細胞内局在(機能)についてコンフォーカル電子顕微鏡で症例毎に分析したい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト胎盤においてアミノ酸輸送機能を修飾する因子のいくつかをIn vivoおよびIn vitroで実証できたため。 また、症例(子宮内胎児発育遅延、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病)の栄養素輸送の病態に迫ることができたため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、In vivoおよびIn vitro実験系(特にIn vivo)の症例数を増やす必要がある。 当該年度までに胎盤栄養素輸送が変化する現象は捉える事ができたが、その細胞内修飾機構をより詳細に分析し報告したい。
|