(1)母体血・胎盤・臍帯血中の環境汚染物質濃度と胎盤の糖・アミノ酸輸送活性の関連性の検討:新鮮胎盤の栄養素輸送機能と国立環境研究所で測定された母体血・胎盤・臍帯血の環境汚染物質[金属元素、PCB(polychlorinated biphenyl)などのダイオキシン類、DDT(dichlorodiphenyltrichloroethane)、残留有機汚染物質、有機リン系、カーバメート系などの農薬の濃度との相関について解析した。その結果、PCBsは母体血で臍帯血より有意に高い傾向にあり、分子量が大きいPCBほど胎盤を通過し難い傾向にあった。母体・臍帯血液中のPCBs濃度上昇に伴い、胎児栄養化を担う合胞体栄養膜細胞が減少することを発見し、PCBs曝露による胎児発育制限機構の1つの可能性を見出した。また、PCBs濃度上昇に伴い胎盤血管新生に寄与するPlGF産生は亢進していることを発見した。化学物質曝露による胎児発育制限には特有のPlGF、sFlt1プロファイルが存在することが示唆された。 (2)環境汚染物質の胎盤糖・アミノ酸輸送活性に与える濃度依存性変化の検討:グルタルアルデヒドは比較的低濃度より濃度依存性にアミノ酸輸送活性を低下させた。ホルムアルデヒドは高濃度でのみアミノ酸輸送活性を低下させた。アセトアルデヒドは変化させなかった。ヒ素は比較的低濃度より濃度依存性にアミノ酸輸送活性を低下させた。カドミウムは高濃度でのみアミノ酸輸送活性を低下させた。メチル水銀は変化させなかった。トリレンジイソシアネート、無水フタル酸は比較的低濃度より濃度依存性にアミノ酸輸送活性を低下させたが、メチルアクリレートは高濃度でのみアミノ酸輸送活性を低下させた。アクリルアミドは変化させなかった。全ての化学物質や金属元素は培養液中の乳酸脱水素酵素を増加させなかった。
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