研究概要 |
胎児の海馬神経新生のピークの時期に母体の免疫反応によって幼弱期にどの様な障害が海馬で起か明らかになっていない。そこで、ラット胎児海馬神経新生のピークであるGD15-18にPoly ICを母体に投与し、その後通常分娩させモデル動物を作成し海馬機能について評価した。その結果、神経細胞の変性は無いが、海馬CA1領域において、シナプス機能を反映していると考えられるFiver volley, fEPSPの減弱及び、シナプス可塑性であるLTP、PPFの障害が明らかになった。更に、前シナプス機能蛋白質であるシナプトフィジンの発現量が低下していた(Oh-Nishi 2010)。この研究結果から、胎児期の海馬神経新生のピークに母体の強い免疫反応によって生後、シナプス機能障害を引き起こすことが動物実験によって明らかになった。今回の研究結果は胎児脳で神経新生が活発に起こっている時期に感染症などによって母体の強い免疫反応が誘導されると、神経細胞同士の情報伝達に必須であるシナプス機能に障害が起こることを示唆している。今後、このシナプス障害を引き起こしている直接の因子を同定することによってこの障害を改善する方法の開発が出来れば、その治療薬の開発が可能になるかもしれない。
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