本研究は脳室周囲白質軟化症(PVL)の治療戦略開発のため、特異的発症因子としてプロスタグランジンを新規に特定し、動物モデルと細胞モデルを用いて治療することを目標とする。本年度は細菌毒(LPS)と低酸素/虚血(H/I)により発症する動物モデルを用い、生後5日齢での脳組織における主要なプロスタグランジン(PGD_2、PGE_2、PGF_<2a>)合成酵素の発現を免疫組織化学的に調べた。その結果、LPS負荷のみの未発症個体ではPGD_2合成酵素であるHPGDSがミクログリア内で、PGE_2合成酵素であるmPGES1とmPGES2がオリゴデンドロサイトとアストロサイト内でそれぞれ発現亢進していた。白質病変を発症する二重負荷モデル(LPS+H/I負荷)ではミクログリアのHPGDSとアストロサイト内のmPGES2がさらに発現亢進していたが、mPGES1はオリゴデンドロサイトの細胞死のため、発現が減少していた。以上より、PGD_2とPGE_2の産生増加がPVL発症のリスクを高めると考えられた。またSequential shaking methodによるオリゴデンドロサイトとミクログリアの初代培養系を確立し、それぞれの単培養系を構築した。来年度はオリゴデンドロサイトとミクログリアを共培養して細胞モデルを構築したい。また、動物モデルと細胞モデルを用いて各プロスタグランジン、合成酵素、受容体に関する生化学的解析へと進めたい。
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