研究課題
脳室周囲白質軟化症(PVL)の病態形成に関わる因子としてプロスタグランジン(PG)に注目した。昨年度は、細菌毒(LPS)と低酸素/虚血(H/I)を組み合わせてPVL様病変を生後3日齢ラットに誘導したモデルを用い、PGD_2、 PGE_2、 PGF_<2α>それぞれの合成酵素の発現を免疫組織化学的に調べた。その結果、PGD_2とPGE_2の産生増加がPVL発症のリスクを高めると考えられた。そこで、本年度は、PGを脳組織内で直接的に検出し、PGの細胞内および細胞間の動態を捉えることによって、PGがどのようにPVL病変形成に関与するのかを明らかにしたいと考えた。組織内のPGを直接的に検出する方法は確立されていないので、固定法から工夫し、新規免疫染色法の開発を目指した。水溶性カルボジイミド(WSC)がカルボキシル基-アミノ基間の縮合反応を促進することに着目し、固定液としてWSCを全身灌流し、次いで、Zamboni液で浸漬固定した。PGそのものに対する抗体は、PGをWSCによる縮合反応を介してBSAに結合させたものを抗原としてウサギに免疫し、自家作製した。染色法の有効性を調べるために、急峻なPG産生を誘発することが知られているカイニン酸(KA)を投与して30分経過したラットを用いた。その結果、KA投与によって海馬CA3および歯状回門を中心にPGF_<2α>に対する免疫陽性反応が顕著に増強した。従って、組織内PGを直接的に検出する染色法の開発に成功したといえる。この染色法を用い、PVLモデルで低酸素/虚血2日後の脳組織を検討した結果、PGE_2はわずかに神経細胞に陽性反応が観察されたものの、PGD_2とPGF_<2α>では顕著な陽性反応は観察されなかった。今後は、今回の染色法を低酸素/虚血直後に行う必要がある。
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