表皮の重要な機能には水分保持とバリア機能があり、これは主に角層によって形成されている。近年、角層に発現するプロテアーゼが角層間接着を切断し、最外層の角質細胞を脱落することで角層を一定の厚さに保ち、バリア機能の維持に貢献することが明らかにされた。表皮に発現するセリンプロテアーゼの1つであるカリクレイン8(KLK8)は、ヒトおよびマウス皮膚では顆粒層から角層に局在することが明らかにされている。皮膚疾患においては、乾癬やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患における発現増加が知られる。創傷治癒の過程には、表皮リモデリングが正常に機能することが重要であり、創傷治癒におけるKLK8の機能解析は、難治性皮膚潰瘍や創傷治癒型の表皮増殖をきたすことで知られる乾癬の病態解明と治療の開発に貢献するものである。本研究は創傷治癒におけるKLK8の機能解析を行い、創傷治癒および乾癬におけるKLK8発現増加の意義について明らかにするとともに、治療戦略のターゲットとしての可能性を追求する。 野生型マウスとKLK8ノックアウトマウス脱毛処理後の背部皮膚に8mmパンチで真皮までの創傷を作成した。完全に上皮化するまで創最大径の計測を行い、創閉鎖までの期間を比較したところ、KLK8ノックアウトマウスで上皮化までの期間に遅れがみられた。また、野生型マウスでは、創傷後3日目から創部辺縁の有棘層上層から顆粒層にかけてKLK8の発現増加を認めた。創部辺縁のKi67陽性ケラチノサイト数について比較したところ、野生型で創傷後3日をピークにKi67陽性ケラチノサイトを有意に多く認めた。以上から、KLK8は創傷治癒において表皮ケラチノサイトの増殖に関与することが示唆された。
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