皮膚悪性黒色腫は、化学療法や放射療法に対して抵抗性であり、全領域の悪性腫瘍の中でも特に予後不良の癌である。その大きな理由ひとつは、早期にかつ容易に所属リンパ節に転移するからであり、現在、極微小な転移を確実に診断できる方法はない。したがって、この高率にリンパ行性に転移する皮膚悪性黒色腫において、患者の予後を改善し根治的な治療を行うためには早期の微小リンパ節転移の有無を正確に評価することが非常に重要であり、昨今、これらの微小リンパ節転移を組織学的に検索するセンチネルリンパ節生検が欧米から端をし、国内においても悪性黒色腫、乳癌などの癌腫を中心に積極的に取り組まれている。今回の研究では、最終的に、黒色腫患者の微小リンパ節転移の超迅速術中診断を臨床応用できる安定した方法・技術論を確立させることを目指あした。そのために、RT-PCR法でのセンチネルリンパ節生検を行い、病理診断とRT-PCR法の比較をさらに症例を増やして検討する。さらに、それらの症例を用いてRT-LAMP法の有用性を検討する予定であった。その結果、この研究期間に新たに多くののセンチネルリンパ節生検を行い、総計50例の症例となった。RT-PCRと病理が一致した症例は82%であり、一方一致しなかった症例は18%であった。これらは、RT-PCRを用いてセンチネルリンパ節生検は非常に有用であることがさらに確かめられた。さらに、RT-LAMP法について検討したところ、RT-PCR法と同程度の検出能力であり、さらに条件設定の検討が必要なことが明らかになった。また、研究予定では、動物実験を予定していたが、動物購入資金や研究時間が十分ではなく、行うことができなかった。
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