retinoic acid-inducible gene-I(RIG-I)は、ウイルス由来の二本鎖RNAを認識するウイルスセンサーであり、抗ウイルス作用を有するIFN-βの発現を誘導し、またそのIFN-βによりRIG-I発現がさらに増強することが判明した(RIG-Iのフィードバック効果)。ウイルス非感染時にRIG-Iのフィードバック効果を人工的に起こすことにより、局所的な免疫賦活効果が得られると考える。われわれは、RIG-I誘導性IFN-βを持続的に発現させることで、IFN-βの細胞増殖抑制効果をメラノーマの治療に応用可能と考え、培養細胞を用い実験を行った。 1.培養メラノーマ細胞のRIG-I発現誘導 5種類のヒトメラノーマ細胞(SK-Mel-28、Colo679、501mel、MeWo、G-361)における、IFN-β刺激によるRIG-I発現誘導について検討した。SK-Mel-28、Colo679、501mel、G-361細胞では、IFN-β添加24時間後には非刺激群と比較して有意にRIG-Iタンパク発現増強が認められた。しかし、同じヒト悪性黒色腫細胞であるMeWoでは、IFN-β誘導性RIG-Iタンパク発現はみられなかった。また、IFN-β刺激によるRIG-I発現誘導が確認された501mel細胞における各種サイトカイン(IFN-β、IFN-γ、TNF-α、TGF-β)によるRIG-I発現誘導を検討した。IFN-β、IFN-γにおいて、明らかなRIG-I発現増強が認められたが、TNF-α、TGF-β刺激ではその発現誘導効果はみられなかった。 2.培養メラノーマ細胞の増殖能への影響 501mel細胞において、サイトカイン刺激後48時間で、非刺激群(100%)と比較してIFN-β89.0%、IFN-γ81.7%と細胞増殖能の低下がみられた。
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