A170/p62/sequestosome1タンパク質は、マウスマクロファージからクローニングした酸化ストレス誘導タンパク質で、その機能が、徐々に明らかにされつつある。A170遺伝子ノックアウトマウスのフェノタイプ解析から過食による肥満とインスリン抵抗性、脂肪肝、高レプチン血症などを発見した。一方、酸化ストレスタンパク質の性質から、UVBによる細胞傷害について検討していたところ、その解析の過程で、ノックアウトマウス由来のA170(-/-)胎児線維芽細胞がUVB照射に対して抵抗性でありアポトーシスが起きにくいこと、Bcl-2の発現が上昇していることを発見した。皮膚発癌において酸化ストレスは重要な役割を果たしているが、その発症機序とストレス遺伝子との関係の全貌は明らかになっていない。そこで本研究は、アポトーシスシグナルとの関連が示唆されている酸化ストレス誘導性タンパク質A170に着目し、紫外線(UVB)による皮膚癌発症における役割を明らかにすることを目的とした。平成21年度はまず、A170ノックアウトマウスのUVB照射に対する感受性を組織学的に解析した。10週齢のWTおよびKOマウスの剃毛した背部皮膚に対して、200mJ/cm^2のUVBを照射し36時間後にダーマトスコピーで観察したのち、採取し、組織学的変化を調べたところ、UVBによる上皮組織の損傷がKOマウスで軽減されており、アポトーシス細胞も有意に少なかった。A170は何らかのメカニズムでin vivoにおいてもアポトーシスシグナルに関与していることが予想され、アポトーシスシグナルとの関連を詳細に解析する予定である。
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