1: Fused S100タンパク質のN末領域の統合的機能解析 ProfilaggrinのN末領域を培養細胞に導入し、角化過程における細胞死の機序を解明する。ProfilaggrinのN末領域のA domainとB domainの全長(amino acid 1-292; Prof(N)-292)およびB domainのNLSまで(amino acid 1-137; Prof(N)-137WT)の配列をLZRSレトロウイルスベクダーに組込み発現コンストラクトを作製した。また同時にProf(N)-137WTのNLS配列に変異を導入したコンストラクトProf(N)-137mtも作製した。これらのコンストラクトを正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)に導入し、誘導されたタンパク質の細胞内局在を検討した。Prof(N)-292コンストラクトおよびProf(N)-137WTコンストラクトから誘導されたタンパク質は核に分布することが確認され、これらの細胞でTunel染色陽性の所見が得られた。一方、Prof(N)-137mtコンストラクトから誘導されたタンパク質は細胞質にのみ存在し、Tunel染色は陰性であった。以上の結果より、profilaggrinのN末領域は角化の過程で核内に移行し、表皮角化細胞の細胞死に関与している可能性が示唆された。 2: 新規Fused S100タンパク質の機能の解析 HornerinおよびFilaggrin2 (FLG2)の各種皮膚疾患における発現に関して検討した。Hornerinは尋常性乾癬や扁平苔癬、慢性期のアトピー性皮膚炎など表皮角化細胞が過増殖を示す特定の疾患のみで発現していたが、FLG2は検討したほぼ全ての疾患で発現が見られ、profilaggrinと協調して作用している可能性が示唆された。
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