(1)角化における細胞死の機序の解析:各種S100 fused proteinのアミノ酸配列を検索したところ、ProfilaggrinのN末領域(proFLG-N)に核局在シグナル(NLS)が同定された。proFLG-Nを培養正常表皮角化細胞(NHK)に導入したところ発現した蛋白質は核に移行し、その細胞はTUNEL染色で陽性となった。これはproFLG-Nが細胞死、特にDNAの分解に直接関与していることを示唆した。さらにproFLG-N内における機能ドメインを検索したところCa結合ドメインをもつAドメインがDNAの分解に関与していた。以上より皮膚の角化、特に核に消失においてproFLG-Nが強く関与していることが示唆され、このproFLG-Nは乾癬やアトピー性皮膚炎など錯角化をきたす疾患における治療のターゲットにもなりうると考えられた。また細胞死を誘導する点から癌の治療の開発にも展開されることが期待される。 (2)新規角化関連分子の機能の解析 ヒト染色体1q21上に新たに同定されたTrichohyalin-like protein 1(TCHHL1)、Filaggrin family member2(FLG2)の構造および発現を中心に機能解析を行った。FLG2はprofilaggrinやhornerinと非常に類似した構造で、正常皮膚、病的皮膚における発現はprofilaggrinと非常に類似していた。しかしアトピー性皮膚炎患者皮膚でのprofilaggrinとFLG2の発現を定量的PCRで調べたところ発現パターンに差があり機能的な差を有している可能性が示唆された。一方TCHHL1は膜貫通ドメインやNLSを有しており他のS100 fused proteinと全く異なる構造であった。また表皮基底層に強く発現していた。細胞内では核膜に局在する可能性が示唆された。
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