研究概要 |
私たちはケラチノサイト(KC)の分化の際に小胞体ストレス応答(unfolded protein response : UPR)が重要な役割を果たしていることを発見し,報告し,研究を進めている。更に,UPRの活性低下を有棘細胞癌(SCC),尋常性乾癬などのKC増殖性疾患のKCにおいて観察した。つまり表皮増殖性皮膚疾患ではUPRが低下することを明らかにした。さらにin vitroの系で、TGFβにより小胞体ストレス応答が亢進することを観察した。 本研究の目的はサイクロスポリンA(CyA)がUPR活性化を介してKCの増殖を抑制することを分子レベルで証明することである。CyAは細胞内結合たんぱく質サイクロフィリン(16種類発見されている)を介して細胞内シグナルを伝達する。そこでまず,尋常性乾癬をはじめとしたKC増殖性皮膚疾患における治療標的サイクロフィリンを同定することを目的とした。研究全般の最終的な目標はサイクロフィリンをターゲットとしたKC増殖抑制薬の開発である。尋常性乾癬治療薬であるサイクロスポリンA、類似物質サイクロスポリンDによって培養ケラチノサイトに小胞体ストレス応答か誘導されることを観察した。培養ケラチノサイトのサイクロフィリンBをノックダウンして,小胞体ストレス応答が誘導されて,KC増殖が低下することを観察した。この結果はサイクロフィリンBがKC増殖抑制の標的であることを強く示唆すると考えた。
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