プロジェクトの最終目的は、全身性エリテマトーデス(SLE)の病態に基づいた根治治療法の開発である。本研究では、SLEの発症・重症化への関与が示唆されているsignaling lymphocyte activation molecule (SLAM) familyに着目する。SLAM familyがSLEの病態に果たしている役割について明らかにすることで、SLAM familyを介した免疫制御療法の可能性を探索する。 その為には、まず、SLAMがどのような免疫担当細胞に発現しているのかを明らかにする必要がある。フローサイトメトリー解析の結果、マウスにおいては、CD8陽性細胞傷害性T細胞はSLAMの発現量が低かったが、大部分のB細胞および一部のCD4陽性ヘルパーT細胞はSLAMを高発現していた。興味深いことに、SLAMを高発現するCD4陽性ヘルパーT細胞の大部分は転写因子FoxP3を発現していた。CD4陽性FoxP3陽性T細胞は免疫反応を負に制御することで自己免疫疾患の発症を抑制する「制御性T細胞」として働いていることが知られている。実験、SLAMを高発現するT細胞を除去したCD4陽性T細胞をリンパ球欠損マウスに移入すると、マウスは様々な自己免疫疾患を発症した。すなわち、SLAMを高発現するCD4陽性T細胞は生体内で自己免疫疾患の発症を抑制していることが明らかになった。 一方、健常ヒトの末梢血単核球においては、メモリー細胞マーカーであるCD45ROを発現するT細胞亜集団がSLAMを発現していた。FOXP3陽性制御性T細胞においてもSLAMとCD45ROの発現には相関がみられ、CD45RO陽性メモリー型制御性T細胞はSLAMを発現する一方、CD45RO陰性ナイーブ型制御性T細胞はSLAM陰性であった。
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