研究課題
本研究では、SLEの発症・重症化への関与が示唆されているsignaling lymphocyte activation molecule(SLAM)familyに着目する。SLAM familyが免疫自己寛容の破綻、SLEの病態に果たしている役割について明らかにすることで、SLAM familyを介した免疫制御療法の可能性を探索する。平成21年度には、主にマウス免疫細胞におけるSLAMの発現パターンを明らかにした。CD4陽性ヘルパーT細胞にはSLAMを高発現する亜集団と低発現する亜集団が存在していたが、興味深いことに、自己免疫疾患発症抑制に必須の細胞集団であるCD4陽性FoxP3陽性制御性T細胞の大部分はSLAMを高発現していた。平成22~23年度SLAMを高発現するT細胞を除去したCD4陽性T細胞をリンパ球欠損マウスに移入すると、マウスは様々な自己免疫疾患を発症した。すなわち、SLAMを高発現するCD4陽性T細胞は生体内で自己免疫疾患の発症を制していることが示唆された。SLAM陽性細胞の生体内除去により実際に自己免疫疾患が発症するかどうかを検証するため、抗SLAMモノクローナル抗体(クローン12F12)を生体内に投与したが、SLAM陽性細胞は生体内でdepletionされず、このクローンは生体内でdepletion抗体として機能しないことが明らかとなった。また、SLAMを高発現するCD4陽性T細胞亜集団は、in vitroで制御性T細胞様の抑制活性を示した。抗SLAM抗体が制御性T細胞の抑制活性に及ぼす影響をin vitroの抑制アセイで検討したが、抑制活性の低下はみられなかった。これらの知見から、SLAMを高発現するCD4陽性T細胞は免疫学的自己寛容の維持に必須であり、その主たる機能はSLAMを高発現するCD4陽性T細胞に含まれるFoxP3陽性制御性T細胞が担っていることが示唆された。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件)
Br J Dermatol
巻: 164 ページ: 1052-1060