研究概要 |
小麦アレルギーには、即時型小麦アレルギー,パン職人喘息,小麦接触蕁麻疹・皮膚炎など多彩な病型が存在する。現在行われているin vitroの小麦特異IgE検査では、これらの病型の鑑別や小麦負荷試験における症状の予側は難しい。本研究では、17種のリコンビナント小麦アレルゲンを用いた特異IgE抗体価測定系を構築し、アレルゲン特異IgE抗体のレパートリーと病型あるいは誘発症状との関連を明らかにすることを目的としている。本年度は、小麦アレルゲンcDNAのクローニングとリコンビナント蛋白質の大腸菌における発現を試みた。小麦種子からtotal RNAを抽出しcDNAを合成した。合成したcDNAを鋳型に、ESTデータベースに登録されている小麦アレルゲンの塩基配列を基に設計した特異的プライマーを用いてPCRを行った結果、全ての目的cDNAを増幅することが出来た。各cDNAを大腸菌発現ベクターであるpGEX-6p, pETあるいはpColdに組み込み、ホスト大腸菌としてRosseta株を用いてリコンビナント蛋白質の発現を試みた。その結果、α-amylase inhibitorやLipid transfer proteinなどの水溶性小麦アレルゲンは、pGEX-6pベクターを用いてglutathione-S-transferase (GST)との融合蛋白質として大量に発現させることが出来た。一部のリコンビナントアレルゲンは封入体を形成したが、リフォールディング操作により可溶化させることが出来た。また、リコンビナント融合蛋白質はアフィニティーカラムで精製することが出来た。Gliadinやgluteninなどの不溶性小麦アレルゲンは、pETまたはpColdベクターを用いて直接発現させることに成功した。今後、GSTを除去した水溶性リコンビナントアレルゲンおよび不溶性リコンビナントアレルゲンを精製し、小麦アレルギー患者血清IgEとの反応性を評価することにより、IgE抗体のレパートリーと症状の関係を明らかにする。
|