研究概要 |
本研究では、17種のリコンビナント小麦アレルゲンを用いた特異IgE抗体価測定系を構築し、アレルゲン特異IgE抗体のレパートリーと病型あるいは誘発症状との関連を明らかにすることを目的としている。昨年度は、リコンビナント小麦アレルゲンの大腸菌における大量発現を試み、水溶性小麦アレルゲンは、glutathione-S-transferase (GST)との融合タンパク質として大量に発現させることに成功した。今年度、アフィニティーカラムを用いて精製したGST-小麦アレルゲン融合タンパク質を用いて、5名の小麦アレルギー患者血清IgEとの反応性を非変性および変性条件下で調べた。その結果、3種の融合タンパク質(α-amylase inhibitor 0.19, peroxidase, thiol reductase)については、IgEが結合することが確認できた。しかし、他の水溶性アレルゲンの融合タンパク質への結合は確認できなかった。今回用いた患者血清中に特異IgEが存在しないか、または、GSTタグがIgE抗体の結合を阻害していると考えられた。次に、精製した融合タンパク質からGSTタグの除去を試みたが、単一タンパク質として精製出来なかった。この理由として、リフォールディングが正常に行われていないと考えられたので、融合タンパク質をシャペロンタンパク質と共発現させることによる可溶化を試みた。その結果、DnaJ, DnaK, GrpE, GroEL, GroESやTfといったシャペロンと共発現することにより、可溶化発現させることに成功した。Gliadinやgluteninなどの不溶性小麦アレルゲンについて、精製方法の検討を行った。逆相C8カラムを利用しで精製することが出来た。本研究では、不溶性小麦アレルゲンのリコンビナントタンパク質の発現と精製、および、水溶性小麦アレルゲンの大腸菌における可溶化発現に成功した。これらのリコンビナントアレルゲンの一部はIgEと結合が確認されたことから、高精度の小麦アレルギー検査への応用が期待できる。
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